【銀行とのつき合い方】銀行とのつき合い方セミナー ~事業承継する前に、経営者保証解除~

2024年4月19日、大阪淀川ロータリークラブの例会で、講演(卓話)をしました。当日は多くの経営者の方が参加されました。
(場所:ホテルグランヴィア大阪)

内容は、銀行とうまくつき合って、事業承継する前に経営者保証を解除しましょうというものです。そうしないと、事業承継が円滑に進まず、社長さんにとっても、後継者にとっても不幸な結果になるかもしれないことを話させて頂きました。

(1)事業に対する想い

私は融資・財務に強い、銀行出身の中小企業診断士です。銀行取引の改善や経営者保証解除などのコンサルティングに取り組んでいます。

旧・大和銀行(現・りそな銀行)に入行し、27年間勤務しました。この間、営業店での融資渉外から始まり、本部では融資企画、融資審査などを経験しました。特に最後に経験した事業再生の部署では、人生を変える大きな出来事が起こりました。

それは、取引先の倒産と社長の自己破産でした。私はそれまで取引先の破産には遭遇しませんでした。ある意味、恵まれた銀行員生活を送ってきたんだなあと今になっては思えます。しかし、その時は大変なショックを受けました。というのは、約3年間その取引先を担当し、業績改善のサポートをするだけでなく、その社長の心が折れそうになった時は励ましてきたからです。

ある日、その社長から「すぐに会いたい」という電話がありました。当時社長は70代前半でした。私が銀行の応接室に入るなり、社長は土下座されて「明日、会社と個人の自己破産を申請をします。いままで面倒みてくれてくれてありがとう。」と言って泣き崩れました。

その時は自分の力のなさ、不甲斐なさに忸怩たる想いでいっぱいでした。それ以来、「取引先が倒産しないように『経営改善』を支援し、社長が自己破産をしないように『経営者保証解除』を支援すること」、これら「銀行取引の改善」が自分の使命だと思って、活動するようになりました。

(2)事業承継時のトラブル

経営者保証とは社長さんが会社の連帯保証人になることです。ですから、会社が倒産したら、社長さんは個人財産を投げうってでも返済しなくてはなりません。それでも返せなかったら、社長さんは自己破産となってしまいます。

この経営者保証が問題になるのが、事業承継の時です。創業社長などのオーナー社長は「社長=会社」ですから、借入する時は個人保証することにあまり抵抗がありません。しかし、後継者の方は違います。なぜなら、自分が作った借金ではないからです。「どうして先代が作った借金の保証人にならないといけないのか?」という疑問を持たれます。

親子間での親族承継では、相続財産もありますので、ある意味「仕方がないなあ」ということで、経営者保証を引き継ぐことが多いようです。一方、従業員承継では様相が違ってきます。「そもそもそんなに貰っていないのに負担感だけがあるなあ」と悩まれる方が多いです。ここでよくあるのが、後継者候補の奥さんが猛反対されるケースです。「私たちが買ったこの自宅が取られるかもしれない」と思うと、ネガティブ・キャンペーンを繰り広げられます。「あんた、社長になりたいんだったら、私と別れて、この家から出て行ってからにして!」と。この結果、事業承継はできず、会社は廃業かM&Aで売却への道に突き進みます。

(3)事業承継する前に経営者保証解除

2013年に国が後押して、日本商工会議所や全国銀行協会が主体となって、経営者保証の弊害を解消していこうという業界ルールが制定されました。名称は「経営者保証ガイドライン」といいます。
主旨としては
①(原則)経営者保証を求めないこと、
②自己破産を回避させること、
③残った保証債務は免除してあげることです。

運用上のポイントもあります。それは①自主的なルールであるため、法的拘束力がないことです。このため、②経営者保証を解除するかどうかの最終判断は、金融機関に委ねられていることです。このため、金融機関とうまく付き合って、経営者保証を解除していかないといけません。

また、経営者保証を解除するには、少なくとも3つの条件をクリアしておかなければなりません。
一つ目は「財務基盤を強化」しておくことです。
二つ目は「法人と個人を分離」しておくことです。
そして三つ目は「経営の透明性」を保っていることです。
これら3条件は一朝一夕にできることではありません。ある程度の期間と準備が必要になってきます。

リーマン・ショックやコロナ禍のように、いつ何時、不測の事態が起こって、業績が急下降してしまうかもしれません。そうなってしまうと、事業承継するどころか、会社の存続すら危うくなります。会社が倒産でもしたら、社長さんご自身の財産もなくなってしまうかもしれません。そうならないように、できるだけ早めに経営者保証を解除しておくことをお勧めします。

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